法政委員コラム

法務政策委員 三菱電機㈱ 宣伝部新規プロジェクト担当部長 桑畑 一浩

昨今、広告表現のコンプライアンス上のテーマとして、ジェンダーやLGBT、人種、障がいの有無等、様々な、又新しい視点での「人権への配慮」が、非常に重要になってきている。

従来の広告倫理やマナー、広告表現上の各種法規等と異なり、このテーマが難しいのは、そもそも社会にとっての新しい課題でもあり、受け止められ方の多様性や日々の進化等によって、表現の是非や配慮のレベルの判断、線引きが難しいだけではなく、気づかないうちに実行してしまい、結果的に相手を傷つけてしまう恐れがあることにある。

では、どう対応していけば良いのであろうか。弊社、広告主の視点で考えてみた。
やはり、一朝一夕での解決は難しく、「知識の習得」「実務上の行動」「結果分析、対応」による、「意識、行動面の向上、蓄積」の継続的な取組みが大事なのではとの考えに至った。
「知識の習得」については、先ず関係者への本テーマに対する関心喚起、自分ゴト化を企図とし、現広告コンプライアンスの社内研修メニューに、「人権への配慮」を織り込み、事例紹介、クイズ等参加型スタイルでの実施が有効と考える。 「実務上の行動」については、制作プロセス上においてなんらかのチェックが必要であり、又本テーマが、社会、生活者の意識や変化が根柢にあることから、広告代理店とも連携し、例えば「チェックリスト」的なものをベースとした、議論、相互確認が必要と考える。
「結果分析、対応」については、知らぬうちに問題となるリスクもあることから、SNS分析の活用による、炎上対策も兼ねたチェックは必須で、ネガティブの数だけではなく、定性的な内容、視点での抽出、分析やフィードバックが肝要である。又、十分気をつけたつもりでであっても相手を傷つけた際の真摯な対応やお詫びも、企業として、非常に大切な姿勢、行動である。

地道ではあるが、関係者全体で、知見、行動、検証を蓄積、追求し続けることが、本テーマの解決のみならず、 多様化し、日々進化する社会において、広告本来の魅力や価値をより高める取組みと言えるのではなかろうか。

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