勉強会レポート

第1回「ウェルビーイングとは何か?」
EYJapan ㈱
ストラテジー・アンド・コンサルティング
シニアマネージャー
松尾 竜聖
㈱ 電通
フューチャークリエーティブリード室
プロジェクトデザイン部
藤井 統吾

法務政策委員会において、ウェルビーイングについての勉強会を開催しました。

今回ウェルビーイングをテーマにした背景としては、ダイバーシティやジェンダー問題自体も大事である一方、その取り組みの本質はどこにあるのかが最も重要であり、その本質は、どのような属性でも「自分らしく豊かさを実感できる社会の実現」=ウェルビーイングを目指す ことであり、社会全体としても、“違い”に着目するフェーズから、“ウェルビーイング”という共通の目的に対して動き出しています。

そのため、国内外における広告表現においても、ウェルビーイングを意識したケースが目立ってきており、令和6年度の勉強会のテーマに設定しました。

ウェルビーイングは、よく心身の健康や幸せと短絡的に捉えられがちですが、心身の健康だけでなく、社会における自身の役割実感や他者とのつながりなど社会的な健康なども含まれた包括的かつ持続的に「良くある状態」を指す概念です。

また、ウェルビーイングという言葉の使い分けとして、客観的ウェルビーイングと、主観的ウェルビーイングの2つに分類され説明されることが多く、客観的なウェルビーイングとはGDPのような「量的拡大」、「物質的な豊かさ」、一方で主観的なウェルビーイングとは「質的な向上」、「実感できる豊かさ」に分けられ、今、社会的に注目されているウェルビーイングとは、主観的ウェルビーイングのことを指しています。


なぜ今ウェルビーイングなのか?

また、なぜ今この実感としての豊かさ(主観的ウェルビーイング)が注目されているかというと、経済的・物質的な豊かさと、人々の実感としての豊かさが乖離を起こしていることが挙げられます。

私たちが目指している社会は経済的・物質的に豊かな社会でしょうか?

それとも、一人一人が豊かさを実感できる社会でしょうか?

また、歴史的に見て、いかに経済的・物質的な豊かさがあったとしても、人々の豊かさの実感値が大きく低下すると、社会の混乱や崩壊につながる動きが起こるということが分かっており、長期的な繁栄のためには、GDPのような経済的な尺度だけでなく、人々の豊かさの実感値(主観的ウェルビーイング)もしっかり把握していくことが重要であるという共通認識が醸成されてきています。


日本のウェルビーイングの現状

ちなみに、日本のウェルビーイングの状態ですが、G7では最低水準であり、国連が発行するワールドハピネスレポートにおいても決して高い順位ではありません。

身体、精神、社会面での健康状態に分けて見てみると、身体的な健康に関しては世界でもトップクラスに高い一方、精神的、社会面での健康は低く、また将来への希望に関する順位も低迷しているのが現状です。


ウェルビーイングの社会的潮流

ウェルビーイングとは決して流行り言葉ではなく、長期的な社会の繁栄のための中核となる概念であると同時に、社会が目指す最上位の目的とも言えます。 世界経済フォーラムや国連でも、“ウェルビーイングに重点においた経済システムの再構築が必要である”という宣言がなされ、Beyond GDPとして、ウェルビーイングに関する枠組みの議論が、様々な分野、エリアにおいて起こっています。

日本においても、内閣府のウェルビーイングダッシュボードに、国民の主観的なウェルビーイングの項目が追加されました。

また、民間においても日本版ウェルビーイングイニチアチブをはじめとするコンソーシアムが立ち上がり、GDPだけではなくGDW(Gross Domestic Well-being)も可視化し、その維持向上に取り組んでいこうという動きが起きており、今後は国、自治体、民間レベル全体で更にウェルビーイングに対する関心や、取り組みの重要性が高まってくると考えられます。

このように、Beyond GDP、ポストSDGsのアジェンダとして注目され、世界規模でウェルビーイングに対する枠組みが形成されつつあるウェルビーイングに対して、流行り言葉として捉えるのではなく、本質を理解し、自社の経営やステークホルダーとのコミュニケーションに活かしていく必要があります。

次回の勉強会では、実際の広告の事例を学び、その自社・社会に対するインパクトについても触れたいと思います。

PageTop