法務政策委員会のウェルビーイングについての勉強会、第5回目を開催しました。最終回となる5回目は「これまでのおさらいと、これから」ということで、4回目までの振り返りに加え、現在進行形で進んでいる最新のウェルビーイングに関する社会動向と、これから一人ひとりがウェルビーイングな社会の実現に向けて何をすれば良いのかについて学びました。
最新のウェルビーイングに関する動き
最新の動きとして、9月に開催された国連の未来サミットで、どのようなことが議論されてきたのかを共有しました。このサミットの成果として、未来のための協定(The pact for the Future)が採択されました。
未来のための協定には、持続可能な開発と資金調達、国際平和と安全保障、デジタル協力と技術革新、グローバル・ガバナンスの改革、そして若者と将来世代という5つの領域にわたる56アクションに関するペーパーが示されており、今後の各国でのアクションの基礎となります。
また、日本の中の動きとして、デジタル庁のダッシュボード地域幸福度(ウェルビーイング)指標によって都道府県、市区町村のウェルビーイング度合いが可視化されてきており、まだサンプル数が十分に集まっていない地域もありますが、今後さらにデータが蓄積されてくると、このウェルビーイング指標が特色ある街づくりや都市計画に活かされる可能性があり、地域におけるウェルビーイング指標が非常に重要な役割を果たしていくことを学びました。
企業がウェルビーイングに取り組む全体像
上記の4つのきっかけより、ウェルビーイングに取り組む全体像として、人的資本(採用力や個々のパフォーマンス発揮など企業における長期的な競争力の維持・向上)の観点、企業経営における多面的なリスクヘッジの観点において非常に重要と言えます。
また、ステークホルダーへのコミュニケーションにおける価値創造の観点でも極めて重要であり、単にブランド価値の向上に寄与するだけでなく、顧客価値、社会価値、財務的価値の向上など企業価値全体へ影響します。
これまでの勉強会の振り返り
そして、これまで1~4回目の振り返りとして、ウェルビーイングの定義や、注目されている社会背景、そしてなぜ企業経営においてウェルビーイングが重要になってきたのか、広告においてウェルビーイングの視点を持つということはどのようなことなのかを改めて認識を深めました。
企業経営においてウェルビーイングは人的資本の文脈でよく使われますが、多様なステークホルダーコミュニケーションが必要な今日では、誰かのウェルビーイングを毀損することによる炎上リスクと隣り合わせであり、ウェルビーイングの視点が欠けることでブランド価値ひいては企業価値に大きな影響を与えてしまうことがあります。逆にステークホルダーのウェルビーイングに寄与・共感を生むコミュニケーションはブランド価値を高め、企業価値の向上も貢献することもあり、コミュニケーションの担当者がウェルビーイングに関する一定の知識、リテラシーを有することが今後ますます重要になると認識しています。
結局ウェルビーイングな社会を実現するために、私たちひとり一人は何をすればいいのでしょうか?
社会全体が目指す調和のあるウェルビーイングな社会に向けて、私たちひとり一人はどのようなことから始められるのでしょうか?
そして、次世代により良い社会を引き継ぐためのアクションとして何ができるのでしょうか?
もっともシンプルなことは自分自身が「ごきげん」でいることです。 現在の経済市場においてパフォーマンスの向上のためエンゲージメントやレジリエンス、ジョブクラフティング(意味づけ)のトレーニングが多くの企業で行われています。しかし成果に囚われてしまうあまりに、余裕がなくなったり精神的なストレスを感じ、パフォーマンスを発揮し"続ける"ことや、他者への寛容な心や支援の精神を忘れたり、関心が持てない・気づかないような状態になってしまうケースもあります。
私たちは様々な立場の人の意見や、それを受け止め対話をしながら調和のある社会を築くためには、まずは自身が「ごきげん」な状態でなければいけません。また自身がハイパフォーマーであり"続ける"のであれば、どこかで自分の機嫌を自分でとれるスキルというのが必要になります。
さらに、ごきげんな状態でいることは、周囲との関係性を円滑にし、創造性やパフォーマンスにも大きく影響を与えます。また将来世代(子供たち)にとっては希望が持てる大人の姿を見せることに繋がります。
※イライラしたり不機嫌な状態の大人の姿をみて希望をもつ将来世代がいるでしょうか?
つまりご機嫌でいることは、自身のパフォーマンスを維持することは当然のこと、周囲への信頼、生産性、創造性の発揮への影響、そして次世代への責任を果たす重要な鍵と言えます。
調和のあるウェルビーイングな社会の実現に向けて、まず私たちひとり一人がごきげんな状態を保つことが、誰もが出来る最初の一歩と考えます。
最後になりますが、社会のごきげんに対して、広告の力が与える影響は大きいと考えます。その広告を作る、伝える側の人間こそ、ごきげんであってほしいと願っております。