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第1回では、「日本のウェルビーイングの現状」「ウェルビーイングの社会潮流」をテーマに、「なぜいまウェルビーイングなのか」について掘り下げた回となりました。続く第2回では、実際の広告の事例を学び、その自社・社会に対するインパクトについても触れることを目指し、「環境編」と題して、環境をウェルビーイングにしている国内外の事例を紹介していきます。
国内事例
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国内企業の事例として、キリンホールディングス / キリンビバレッジのソーシャルアクション「キリン スリランカフレンドシッププロジェクト」をご紹介いたしました。発売開始から35周年を迎えた「午後の紅茶」。キリングループでは生産地やそこで働く人とのより良いパートナーシップを築き、良質な原料茶葉を使用した「キリン 午後の紅茶」を提供し続けることができるように、「キリン スリランカフレンドシッププロジェクト」を実施しています。
具体的に行っているのが、「キリン 午後の紅茶」に使用している紅茶葉の産地であるスリランカの紅茶農園が、ウェルビーイングでより持続可能な状態であり続けるために、「レインフォレスト・アライアンス」の認証取得支援です。
キリングループは、スリランカの紅茶農園が、「環境保全」「社会的公正」「経済的競争力」の全てにおいて、将来にわたっても持続的に運営していけることを保証する国際的な認証を取得するための支援を行っています。米国ニューヨーク及びオランダのアムステルダムに本部を置くレインフォレスト・アライアンスとの協働プログラムです。
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実際に、スリランカの紅茶農園における認証取得大農園のうち、キリングループの支援で取得した割合は93農園(約30%)に及んでいます。また、2025年には認証取得支援小農園数の目標を10,000農園に設定することも公開しています。
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国外事例
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国外企業の一つ目の事例として、スウェーデンのフィンテック企業「Doconomy」をご紹介いたしました。
生活者は、自分自身がどれくらいの二酸化炭素を排出しているのか、もっといえばどれくらい大気汚染の進行に加担しているのかは分からない状況のなかで、欧米ではグリーンディール政策の検討がはじまり、脱炭素化に向けて世論が加速しています。そこでスウェーデンのフィンテック企業「Doconomy」は、商品を購入した時に自動的に二酸化炭素の排出量が計測されるクレジットカード「DO」を開発しました。
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ワンランク上のプレミアムカード「DO Black」には、排出量に応じて利用を制限できる機能を追加。消費者レベルでの脱炭素行動を簡単に行えるようにしています。
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二つ目の事例はアパレルメーカーの「ラコステ」です。5月22日の「国際生物多様性の日」に、ラコステは世界各地で「クロコダイル・フリー」というキャンペーンを実施しました。国際自然保護連合(IUCN)とのパートナーシップを結び、野生動物への取り組みをさらに強化するためにも、ラコステのアイコンであるワニを世界のラコステの主要店舗の看板で10の絶滅危惧種へ1日限りの変更を行うソーシャルアクションです。
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また、この日の営業利益はすべて、IUCNによる絶滅危惧種の野生動物の保護活動にも役立て、企業にとって象徴的なものを変えるという非常にメッセージ性の強いアクションとなっています。
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ATPツアー・マスターズ1000のなかで男子プロテニス選手ノヴァク・ジョコビッチが着用したことでも話題になりました。
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最後に紹介した事例はペールのミネラルウォーターメーカー「Andea」の事例です。世界には川、湖、池、小川などの浄水場などで処理されていない水に依存している人がまだ1億5900万人いるとされており、彼らは洗濯や皿洗いなどで洗剤を使用して川を汚染してしまっている現状にあります。「Andea」は、アンデス山脈の水を使用しているブランドとして、世界の水質を改善し、環境をウェルビーイングする方策を打ち立てました。
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それは従来の洗濯用石鹸に代わる、川をきれいにする石鹸です。 この石鹸には河川の汚染物質を摂食するプロバイオティクス機能を備えた微生物が含まれており、人々がこの石鹸を使って洗濯すればするほど水質を改善するシステムを生み出すことに成功しています。
これらの事例を踏まえながら、後半では、環境に配慮していないにもかかわらずしているように見せかけて商品やサービスを提供する「グリーンウォッシュ」をテーマに勉強会を開催いたしました。
このように、Beyond GDP、ポストSDGsのアジェンダとして注目され、世界規模でウェルビーイングに対する枠組みが形成されつつあるウェルビーイングに対して、流行り言葉として捉えるのではなく、「だれのためのウェルビーイングか?」の解像度を高めながら取り組む必要があります。
次回の勉強会では、さらに実際の事例を学び、社会に対するインパクトについても触れたいと思います。