法政委員コラム

SNSについて思うこと

㈱東急エージェンシー
 コーポレート本部総務局長
石黒 博達

先日、とある研修に参加する機会がありました。その研修の講師の方が休憩中の雑談で「グレート・ハック」という映画について触れました。正直に言うと、その時はこの映画のことを全く知らなかったのですが、講師いわく「広告業界の人なら見ておいたほうが良い」ということでしたので早速視聴しました。

『グレート・ハック』は、ソーシャルメディアプラットフォームとデータ利用の影響に焦点を当てたドキュメンタリー映画です。この映画は特に、2016年のアメリカ大統領選挙やブレグジットの際にデジタルデータがどのように政治的キャンペーンや世論に影響を与えたかを探ります。全体を通して、個人情報の管理の重要性や、私たちの選択がどのように操られる可能性があるかについて警鐘を鳴らす内容となっています。

この映画を見終わった後、私はふと兵庫県知事選挙のことを思い出しました。兵庫県知事選挙では、圧倒的に不利だとされていた現職の知事が逆転で当選するという結果でした。その一因としてSNSでの選挙活動の盛り上がりが挙げられています。このようなできごとが身近に起こったことで、SNSには世論に大きな影響を与えるポテンシャルがあることを再認識させられました。

しかし、SNSが多くの人とつながることができる便利なツールである一方で、使い方次第では個人情報を悪用されたり、特定の主張へ誘導されたりする危険性もはらんでいます。また、知らずに他人を傷つけている可能性も否定できません。これらのリスクを回避するためには、SNS上にあるさまざまな情報のファクトチェックをし、慎重に判断することが重要だと言われています。

さらに、SNSはその機能が日々進化を遂げています。新しい機能が次々と登場し、それに伴うリスクも多様化しています。例えば、フェイクニュースの拡散や広範囲にシェアされるコンテンツの影響力など、今まで考えもしなかった新たな課題が浮上しています。SNS利用者としては、これらの新たな動向にも敏感に対応しなければなりません。

広告業界においてもSNSを活用した広告やプロモーションが数多く行われていますので、特に誠実な姿勢でSNSと向き合わなければならないと強く感じています。SNSを通じて多くの人々に影響を与える力を持っている以上、その力を誠実かつ倫理的に使用する責任が求められます。

また、広告業界においては、消費者に信頼されるブランド作りが重要です。SNSはそのための強力なツールですが、その利用には高い倫理観が求められます。消費者の信頼を裏切るような情報操作や偽情報の拡散は、一度でも行われれば取り返しのつかない信用失墜につながります。

実際のところ、SNSは日々進化しており、新しい機能が次々と登場します。そのため、常に最新の動向を把握し、適切に対応することも求められます。SNSの持つ影響力とその利便性を理解することと同時に、そのリスクも常に念頭に置き、情報の管理と発信に対して慎重に取り組んでいく姿勢が重要だと、この映画の視聴によって考えさせられました。

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