活動レポート

【実践広告スキルアップセミナー7/9】
広告ビジネスのトランスフォーム

「広告ビジネスのトランスフォーム」

令和元年度実践広告スキルアップセミナーを、7月9日、16日、23日の3日間にわたって日比谷コンベンションホールで開催した。『デジタルトランスフォーメーション2019』と題し、9日は「広告ビジネスのトランスフォーム」をテーマに3人の講師を招いた。会員社・一般から約150名が参加した。

第1講は「広告会社の未来」と題して、国見昭仁氏(㈱電通 エグゼクティブ・プロフェッショナル/エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター)が登壇。 第2講は「クリエイティブの鍵は“コンサル&ワンストップ”」をテーマに、森永賢治氏(㈱ADKクリエイティブ・ワン 代表取締役社長)が登壇。 第3講は「広告会社やクリエイターを使った新しいビジネスの作り方」をテーマに、須田和博氏(㈱博報堂ブランド・イノベーションデザイン局エグゼクティブ・クリエイティブディレクター/スダラボ代表)が登壇した。

その後、3氏によるトークセッションも行った。

第1部:国見昭仁氏

これまでTVCMなどマスメディアによる広告活動が主流だったが、今の生活者はスマホを通じて多様なメディアから、能動的に情報を選択している。しかしながら、成熟期を迎えた広告会社のビジネスは衰退ではなく、第二の創業期と捉えられるのではないか。
従来の企業活動は、開発から製造・販売・店舗運営までのすべてのフローが、長年蓄積されてきた「知識」をベースに行われており、広告会社が得意とする「アイデア」は、主に広告活動や商品開発などの限られた領域で発揮されてきた。このあり方を、広告会社が“アイデア(知恵)を用いて未来を創造する会社”へと進化することで拡大できないだろうか?

国見昭仁氏
国見昭仁氏

電通ビジネスデザインセンターでは、クライアントの存在意義(コア・コンピタンス)を再設計するところからスタートし、それを軸に商品開発、店舗運営、人事組織、広告活動…と企業活動をリデザインしていくアプローチをとっている。

広告会社や広告の存在意義はBreak throughを生み出す力になることだと信じている。
企業の未来創造、ひいては変革の時を迎えている広告界のそれぞれの業種や業態についても、未来図を考えていきたい。

第2部:森永賢治氏

2014年頃、金融業界を担当しており、FinTechの概念を知った。あるカンファレンスでリンゴの写真が映し出されており、それが電源コードが差し込まれたものに変わった。リンゴが“オンラインになる”と、様々な可能性が生まれる。ひいてはすべてのモノがオンラインになると、我々のライフスタイルも劇的に変化するだろうし、個人の信用も価値になる時代が来ている。

森永賢治氏
森永賢治氏

今、コミュニケーションの設計は「ボウリング」ではなく「カーリング」の形になっている。ボウリングでは直接ピンの中心にあてるとストライクだが、カーリングでは途中のストーンの動きも合わせて計算しながら誘導する。どうやったら広がるか、コントロールできるか、さらに届いた後はどうなるか。望んだ所に届いているかを、丁寧に追っていくことが求められる。

森永賢治氏

以前国見さんが語ってくれたのだが、コンサルティング企業が社長の右耳(左脳)に経営面のアドバイスをするとすれば、広告会社は左耳(右脳)に、企業の夢や目標について話ができるようになるべきではないか。実際に、短期的な数値目標の達成ではない、中長期的な視座からの要望も増えている。 デジタルトランスフォーメーションによって広告界がどうなるかを言い当てられる人はいないと思う。ADKグループはホールディングス化し、さらにクリエイティブブティック構想によって、さまざまなソリューションの形をもつ企業としてこれからも様々な課題に取り組んでいきたいと思っている。

第3部:須田和博氏

デジタルの力でIoTが進み、全てのモノがメディアになる時代に、広告産業は何ができるだろうか。私はAD出身で、CMプラナーを経て、CDになってからはWebやスマホでの広告や商品開発、さらに現在はAR・VR・MR(=空間や視界のIoT化)を用いた広告にも取り組んでいる。

国見昭仁氏
須田和博氏

広告ターゲティングの精度向上は昨今の大テーマだが、どんなにテクノロジーが進化してもイヤな広告はブロックされる。現在のカットイン型ADには限界があると実感しているし、広告の領域自体も「広告媒体×広告表現」の組み合わせから、「万物×万象」にまで広がっていく。であればこそ、広告は受け手に取ってイヤなものであってはならないし、どんなものなら歓迎されるかを考え抜く必要がある。

スダラボでは、「思いついたら、やってみる」精神を大切にしている。2014年にリリースした「NATURE BARCODE (rice code)」をはじめ、自主開発の「新しい広告のようなもの」をつくる取組みを継続的に行っており、これが新しいビジネスのヒントになっている。最新テクノロジーも、“枯れた技術”も、アイデアの力で生かすことができるはず。不確実性を積極的に取り込みながら“実験するマインド”で、ひとつひとつのチャレンジがつなげてくれる“ご縁”を大切に、新しい広告の形を模索していきたい。


受講者らは熱心にそれぞれの講義を聴講していた。