活動レポート

【第2回 特別講演会】
「キャッシュレス」がテーマ

「キャッシュレスとGAFA+Aの金融戦略」

令和元年度第2回特別講演会を10月1日、日比谷コンベンションホールで開催した。『キャッシュレスとGAFA+Aの金融戦略』を演題に、佐藤元則氏(NCB Lab. 代表)、吉富才了氏(㈱電通 ビジネスD&A局ビジネス共創ユニット)の2人の講師を招いた。会員社・一般から約160名が参加した。

日本のキャッシュレスの現状と展望

 折しも講演当日の2019年10月1日は、消費税が8%から10%にあがり、政府による「キャッシュレス決済に対するポイント還元制度」がスタートした日。キャッシュレス決済というと昨年から“〇〇ペイ”などの名称でモバイル非接触/QRコード決済の知名度が急上昇しているが、以前からあるクレジットカードやプリペイドカード、インターネットで買い物する際のオンライン決済もキャッシュレス決済の一つ。


2人が同時に登壇して講演を行った

 日本の現状を見てみると、政府はキャッシュレス決済比率目標を2025年までに40%、将来的には80%まで高めると発表している。我々が行った意識調査でも、70%がキャッシュレスを今後使いたいという意向だったが、20%しか実際には利用していない。中小企業での未導入率65%が示すように使える場が限られている、使う際に“借金”の印象からうしろめたさを感じる、といった意識のギャップも存在している。 政府がキャッシュレスを推進する目的は、「消費活性化」「税収UP」「データ活用による利便性の向上」「安全性・生産性の向上」の4点に集約できる。2020年6月でキャッシュレス決済によるポイント付与やキャッシュバックが終了するが、それ以降はキャッシュレス決済を使いたくないと回答している層をどのようにスイッチさせるかが普及のカギを握るだろう。


佐藤元則氏

GAFA+Aの経済圏拡大戦略と金融サービス

 次に、Google、Apple、Facebook、Amazon、Alibabaの金融戦略を見ていこう。
 Googleは「決済データを広告価値の向上に使う」目的から2011年Google Walletをスタートしたが、方向転換を余儀なくされGoogle Payへと紆余曲折の末に一本化した。独自ブランドを確立し、独自の金融サービスで経済圏の拡大を狙っている。
 Appleはハードの売上ダウンからサービス収益の拡大を課題としており、Apple Payに続くApple Cardを発表した。ハード・ソフト両面の売上増進と金融サービス収益アップを目指している。
 FacebookはFacebook Creditsを2年で撤退し、メッセンジャー送金決済も1年半で撤退。広告収入と決済収入を同等の柱に成長させること目指して、仮想通貨Libraを発表したが、各国政府はイチ民間企業による通貨の発行に反発を示している。
 Amazonは顧客利便性を徹底的に追求した1-Click決済、音声アシスタントのalexaなどのサービスを開発。決済情報をもとに顧客ニーズをあぶりだし、衣食住娯楽の商品やサービスを開発・提供して、プライム会員を増やしてAmazon経済圏を拡大している。バリューチェーンを変革し、クロスボーダーの巨大経済圏を築こうとしている。
 Alibabaは、総合生活サービスとして決済・投資・保険・融資・ライフスタイルサービスを拡充している。信用=財産をスローガンに、ソーシャルスコアを構築。アリババ経済圏の住民を20億人に増やし、トータルな金融サービスの提供を目指している。

講演風景:キャッシュレスのエコシステム
吉富才了氏

 GAFA+Aを見ていくと、顧客第一の姿勢を徹底して追求する企業もあれば、そうではなく、自社の利益最優先で進めている企業もあるように見える。この違いが今後の成否にどう結び付くか。独自経済圏拡大のカギは、「優良顧客との絆強化」「パーソナルな提案の有無」「独自決済手段の提供」「最新テクノロジーの活用」の4点だろう。生活者の欲望を満たし続ける仕掛けを作れるかどうか、注目していきたい。