活動レポート

【アドフォーラム】
広告担当部門の組織と人材

「広告担当部門の組織と人材をどう考えるか」

12月9日、コートヤード・マリオット銀座東武ホテルにて東京広告協会アドフォーラムを開催した。「広告担当部門の組織と人材をどう考えるか~デジタル化時代の広告担当部門の役割と組織の変化、人材について各社の取り組みから今後のあり方を考える~」をテーマとして、約130名が参加した。
登壇者は以下の通り。
コーディネーター 丸岡吉人氏(跡見学園女子大学マネジメント学部教授)
スピーカー 立山昭洋氏(花王 マーケティング創発部門メディア企画部長)
      木下淳氏(Sansan Sansan事業部マーケティング部マネージャー)
      一色昭典氏(富士フイルム e戦略推進室マネージャー マーケティンググループ統括)

解題:丸岡吉人氏

 ここ数年、広告関連部門の担当者らへの専門誌などのアンケ―ト結果を見ると、広告・マーケティング部門における「人員不足」「機能不足」と回答する企業が非常に増えている。 これは、統合型マーケティングやデジタルマーケティングなど、新たな知識が必要とされるマーケティングの形が次々と生まれていることによるものだろう。それに伴って、過去数年以内に組織改編などを行ったと答える企業も多く、各社それぞれの努力があると思われる。  本フォーラムでは、組織と人材という難問を共有し、皆で取り組むきっかけとするためにその最前線で課題に取り組まれているアドバタイザー様に登壇いただき、
・経営環境や広告の役割の変化に対する認識
・組織と人材に関する課題
・課題解決のための対策や工夫
・得られた成果や残された課題など
についてお話しいただくこととした。


丸岡吉人氏

立山昭洋氏

10年前に比較してデジタル関連のメディア費用が弊社では約20倍に増えている。この10年で、
・デジタルメディアの拡大
・Eコマースの拡大/キャッシュレス決済の拡大
・消費行動のインターナショナル化
・「環境」「人権」への意識の高まり
など、大きな変化が続いている。これにより、生活やビジネスのデジタル化が一段と進み、広告業務の高度化、広告出稿に関連するリスクの増加、ECや新業態ビジネスへの対応など、広告部門の業務は複雑化し、役割が増加している。
 弊社ではそれに対する組織の見直しを行った。これにより、よりスピーディーな意思決定ができ、知見も共有できる体制にしていきたいと考えている。人材育成の面では、特にマーケティング部門全体としてデジタル関連の教育、啓発を重視している。具体的には、プラットフォーマー各社との取組み事例をまとめ、知見として共有したり、SNSに関する検定を継続して受験する仕組みを作るなど、先ずは基本的なデジタルリテラシーの底上げを図っている。まだまだ課題は継続しているが、引き続き全力で取り組んでいきたい。


立山昭洋氏

木下淳氏

 弊社では拡大する業務量に対してマーケティング部門の人材も限られており、その時々で必要な業務に対して最大のパフォーマンスを出していくために、組織内外ともに柔軟に動ける体制づくりを重要視している。
  具体的には社内ではアジャイル型の組織構築を行うこと、スキルマップを作成し、人材のゼネラリティとスペシャリティが組み合わさるようにスキルを育成していくこと、1つのチームとして組織の壁を越えてパフォーマンスを最大化できるようにすることなど。
 また、外部パートナーとの協力体制を築くことにおいては、総合広告会社、Web専業広告会社などの役割による垣根を越えて、チーム全体で課題を共有できることを目指した体制づくりを進めている。


木下淳氏

一色昭典氏

 事業環境が激変する中、弊社は2011年にe戦略推進室を立ち上げた。自社内でマーケティングに関するデータ・ノウハウを適切に蓄積する、意思決定のスピードアップ、適切なコスト管理を行えるようにすることを目指している。デジタル時代のマーケティング部門の機能は日々拡大しており、特に社内外との対話に際しては「データ」に基づき説得力を持って話すことが非常に重要だと考えている。
 また、縦割り構造・外注依存のままでは、デジタル化の推進に際して宣伝担当者の情報・ナレッジの分断、評価指標の不整合、マーケティングデータの分断、オーディエンスデータの外部流出、といった弊害が起きる懸念もあった。広告制作・出稿・運用・分析等のインハウス化により、それら弊害の解消と、マーケティングPDCAの効率化・高速化が一定程度図れたと考えている。しかしながら新たな課題ももちろん生まれており、継続して取り組んでいきたい。
一方、広告会社との協業についても、チームビルディングよる課題の共有を行うことで、より事業課題にマッチした形で行えるはずと考えている。マーケティングに求められる役割の拡大にこたえられるよう、今後も尽力していきたい。


一色昭典氏

第2部では、パネルディスカッションを行った。“会場内限定”の話題も多数話され、満員の会場の中、参加者は各講師の話に熱心に耳を傾けていた。